ポルシェとアウディ、VWグループ傘下の2大ブランド
高級車を語るとき、必ず名前が挙がるポルシェとアウディ。両社とも同じフォルクスワーゲン(VW)グループに属していることをご存知でしょうか?
実は、この2つのブランドは同じ企業グループに属しながらも、全く異なる歴史と個性を持っています。「ドイツ車だから似ているんでしょ?」なんて思っていたら、大きな間違いです。
ポルシェとアウディ、そしてVWグループの関係性は、自動車業界の中でも特に複雑で興味深いものなんです。
今回は、同じVWグループに属しながらも、全く異なる魅力を放つポルシェとアウディの歴史と関係性について詳しく解説します。
なぜこの2つのブランドがVWグループに属することになったのか?それぞれのブランドはどのような個性を持っているのか?
自動車ファンならずとも、この複雑で魅力的な関係性を知れば、ドイツ車への見方が変わるはずです。
VWグループとは?世界を代表する自動車メーカーグループ
まずは、ポルシェとアウディを傘下に持つVWグループについて理解しておきましょう。VWグループは正式には「フォルクスワーゲン・グループ」と呼ばれ、ドイツのニーダーザクセン州ヴォルフスブルクに本社を置く世界屈指の自動車メーカーグループです。
VWグループの規模は想像以上に巨大です。乗用車ブランドだけでも、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ブガッティ、ベントレー、セアト、シュコダなど多数のブランドを傘下に持っています。
2016年から2019年にかけては、販売台数でトヨタを抜いて世界最大の自動車メーカーとなり、ヨーロッパでは20年以上にわたり最大の市場シェアを維持しています。
VWグループの始まりは、第二次世界大戦前にナチス政権が設立した「国民車製造会社」にまで遡ります。当時の「国民車」構想から生まれたのが、あの有名なフォルクスワーゲン・ビートル(カブトムシ)でした。
VWグループの傘下ブランドと特徴
VWグループの傘下には、それぞれ異なる特徴を持つブランドが集まっています。
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フォルクスワーゲン:もとはナチス政権による国策企業として国民車を生産していたことから、現在もドイツでは大衆車メーカーとして浸透しています。日本では高級車としての位置付けの印象が強いですね。
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アウディ:1964年にVWグループの傘下に入り、ベンツやBMWと同等ランクの高級車ブランドとしての地位を確立しています。
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ポルシェ:高級スポーツカーの代名詞とも言えるブランドで、2012年にVW傘下となりました。
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ランボルギーニ:フェラーリのライバルとして名高い高級スポーツカーブランドで、1999年にVWグループの傘下に入っています。
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ブガッティ:超高級スポーツカーブランドとして知られています。
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ベントレー:英国の高級車ブランドです。
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セアト:スペインの自動車メーカーで、1993年に完全子会社となりました。
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シュコダ:チェコの自動車メーカーで、1991年にVWグループの傘下に入りました。
これだけ多様なブランドを傘下に持つVWグループですが、今回はその中でも特に興味深い関係性を持つポルシェとアウディに焦点を当てていきます。
ポルシェとVWの深い歴史的つながり
ポルシェとVWの関係は、単なる企業買収以上の深い歴史的つながりがあります。その始まりは、フェルディナント・ポルシェ博士にまで遡ります。
ポルシェ博士は、ヒトラーの命を受けてVWビートル(タイプ1)を設計した人物です。当時のドイツでは「国民車」の開発が国策として進められており、ポルシェ博士はその中心的役割を担っていました。
ビートルは大ヒット商品となり、世界中で愛される車となりました。ポルシェ博士はビートルの販売ごとに多額のロイヤリティを手にし、その資金をもとに自動車の設計会社を設立します。
その後、ポルシェ博士の息子であるフェリー・ポルシェが、設計だけでなく自動車の開発と販売を始め、自動車メーカーとして「ポルシェ」を確立していきました。
つまり、ポルシェとVWは創業の時点から深いつながりがあったのです。ポルシェはVWの車の設計も手掛けつつ、自社ブランドの車も作るという関係性で成長していきました。
ポルシェからVWへ、そしてVWからポルシェへ
ポルシェとVWの関係性は、時代とともに変化していきます。
VWは国営から民営企業となった後も、「フォルクスワーゲン法」という特別な法律によって守られていました。この法律は、一般投資家が20%以上の議決権を持つことを禁止するもので、実質的に買収を防ぐ役割を果たしていました。
しかし、このような保護は自由競争に反するとEUから反発が出ました。そこで、創業当時から関係の深いポルシェの親会社「ポルシェ・オートモービル・ホールディングス(PAHSE)」に株式を売却することで、EUの反発から逃れる策が取られました。
さらにPAHSEはVWの株式を買い進め、最終的には75%まで買って子会社化すると発表しました。ところが、2008年のリーマンショックの影響でPAHSEは資金繰りに行き詰まります。

結果として、子会社であるポルシェAG(自動車メーカーとしてのポルシェ)をVWに売却することになりました。こうして、ポルシェAGはVWの傘下に入ることになったのです。
しかし、ここで複雑なのは、VWの筆頭株主はPAHSEのままだということ。そして、PAHSEの経営権はポルシェ一族(義理の息子の系列のピエヒ一族を含む)が握っているのです。
簡単に言えば、「ポルシェ一族が支配しているVWとポルシェをくっつけるのに、ポルシェを中心にしようとしたけど、やめてVWを中心にした」という形になったのです。
アウディとVWの関係性
アウディとVWの関係は、ポルシェとVWの関係ほど複雑ではありませんが、それでも興味深い歴史があります。
アウディの創始者アウグスト・ホルヒはもともとメルセデスベンツの工場長出身でした。アウディの前身であるアウトユニオンは、一時期メルセデスベンツの傘下にもなっていました。
第二次世界大戦後、ドイツの自動車メーカーは大きなダメージを受けて衰退しました。海外の自動車メーカー、特にアメリカのメーカーがドイツ国内で販売台数を伸ばす中、対抗するためにダイムラーベンツがアウディを買収しました。
その後、VWが好調になると、ダイムラーベンツからアウディを買い取り、一時期はアウディの工場でVWの車を作っていたこともありました。VW傘下になったのは1964年のことです。
アウディはVW傘下に入った後、高級車ブランドとしての地位を確立していきました。特に、四輪駆動技術「クワトロ」の開発は、アウディのブランドイメージを大きく向上させる要因となりました。
VWとアウディの技術共有
VWとアウディの関係で特筆すべきは、技術の共有です。VWの大ヒット車種「ゴルフ」の開発には、アウディから移籍したルドルフ・ライディングが大きく関わっていました。
彼はコンパクトFFを提案し、それがゴルフとして結実しました。そのため、ゴルフはアウディ開発の車とも言われることがあります。
現在では、アウディA1の中身はゴルフですし、VWのDSGをアウディではSトロニックと呼んでいるなど、技術の共有が進んでいます。
VWは「国民車」を作り、その高級版がアウディという位置づけになっています。これはトヨタとレクサスの関係に似ていると言えるでしょう。
ポルシェとアウディの違い:異なるブランド戦略
同じVWグループに属するポルシェとアウディですが、そのブランド戦略や車の特性には大きな違いがあります。
ポルシェは創業当初からスポーツカーに特化したブランドとして発展してきました。特に911シリーズは、後輪駆動・水平対向エンジン・リアエンジンレイアウトという独自の設計思想を貫き、スポーツカーの代名詞となっています。
一方、アウディは高級セダンやSUVを中心に幅広いラインナップを展開しています。特に「クワトロ」と呼ばれる四輪駆動システムは、アウディの代名詞となっています。
どんな天候でも安定した走行性能を発揮するアウディの車は、実用性と高級感を兼ね備えた車として評価されています。
走りの違い:スポーツかラグジュアリーか
ポルシェとアウディでは、走りの特性も大きく異なります。
ポルシェはスピードと加速に優れ、サーキットを意識した設計がされています。特に911シリーズは、リアエンジンレイアウトによる独特の走行感覚が魅力で、スポーツドライビングを楽しみたいドライバーに支持されています。
一方、アウディは高級車としての快適性と走行性能のバランスを重視しています。クワトロシステムによる安定した走行性能と、洗練されたインテリアが特徴です。
アウディは「その気になれば超ホットになれるが、普通はクールな」ブランドと言えるでしょう。日常使いから長距離ドライブまで幅広いシーンで活躍する車として設計されています。
あなたはどんな走りを求めていますか? スリリングなスポーツドライビングを楽しみたいならポルシェ、快適性と走行性能のバランスを求めるならアウディ、という選択肢があります。
VWグループ内での技術共有と独自性
VWグループ内では、基本的な技術やプラットフォームを共有しつつも、各ブランドの独自性を保つ戦略が取られています。
例えば、VWグループは現在、主に3種類のEV専用プラットフォームを展開しています。量販EVが採用する「MEB」、アウディとポルシェが高性能スポーツ車に採用する「J1」、そして中大型の高級車向けの「PPE」です。
これらのプラットフォームを共有することで開発コストを削減しつつも、各ブランドはエンジンチューニングやサスペンション設定、内装デザインなどで独自性を出しています。
ポルシェ・マカンとアウディ・Q5は同じプラットフォームを使用していますが、走行フィールや内装の質感は全く異なります。これは、同じ土台を使いながらも、各ブランドの哲学や価値観を反映させた結果です。
将来的な展望:電動化時代のVWグループ
VWグループは電動化に積極的に取り組んでおり、2030年までに世界販売の5割をEV(電気自動車)にする目標を掲げています。これは年間450万~500万台に相当する規模です。
ブランド別のEV化目標も設定されており、ポルシェは2030年までに新車販売の80%以上をEVにする計画です。アウディはさらに積極的で、2026年以降に発売する新型車を全てEVとし、2033年には内燃機関車の販売を完全に終了する予定です。
電動化の時代においても、ポルシェはスポーツカーとしての走行性能を追求し、アウディは高級車としての快適性と先進技術の融合を目指すという、それぞれのブランド哲学は変わらないでしょう。
ポルシェとアウディ、あなたはどちらを選ぶ?
ここまでポルシェとアウディの歴史や特徴について見てきましたが、あなたならどちらを選びますか?
両ブランドには、それぞれの魅力があります。
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ポルシェを選ぶ理由:スポーツカーとしての走行性能、独自のデザイン哲学、ブランドの歴史と伝統、運転する楽しさを最大限に追求したい方に。
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アウディを選ぶ理由:高級感と実用性のバランス、先進技術の積極採用、幅広い車種ラインナップ、日常使いから長距離ドライブまで快適に過ごしたい方に。
価格面では、一般的にポルシェの方が高額です。特に911シリーズは高級車の中でも高価格帯に位置しています。アウディも高級車ですが、比較的リーズナブルなモデルも用意されています。
最終的には、あなたの車に求めるものが何かによって選択は変わってくるでしょう。スポーティな走りを最優先するならポルシェ、快適性と先進性のバランスを求めるならアウディ、という選択になるかもしれません。
共通点:ドイツ車としての品質と信頼性
ポルシェとアウディは異なるブランド戦略を持ちながらも、ドイツ車としての品質と信頼性という共通点を持っています。
どちらも高い技術力と品質管理によって作られており、長期間にわたって高いパフォーマンスを維持することができます。また、VWグループの一員として、グループ内で培われた技術やノウハウが活かされています。
ポルシェとアウディ、そしてVWグループの関係性は、自動車業界の中でも特に興味深いものです。同じグループに属しながらも、それぞれが独自の魅力を持ち、異なるユーザーの心を掴んでいます。
まとめ:同じVWグループでも異なる魅力を放つポルシェとアウディ
ポルシェとアウディは、同じVWグループに属しながらも、全く異なる魅力を持つブランドです。
ポルシェはVWビートルの設計者であるポルシェ博士に始まり、スポーツカーの代名詞として発展してきました。一方、アウディは1964年にVW傘下に入り、高級車ブランドとしての地位を確立しています。
両ブランドの関係性は複雑で、特にポルシェとVWの関係は「子会社でありながら親会社でもある」という独特の構造を持っています。
走りの特性も大きく異なり、ポルシェはスポーツドライビングを追求し、アウディは快適性と走行性能のバランスを重視しています。
VWグループ内では技術やプラットフォームを共有しつつも、各ブランドの独自性を保つ戦略が取られており、電動化時代においてもそれぞれのブランド哲学は変わらないでしょう。
ポルシェとアウディ、どちらを選ぶかは、あなたが車に求めるものによって変わってきます。スポーティな走りを楽しみたいならポルシェ、快適性と先進性のバランスを求めるならアウディ、という選択肢があります。
どちらも素晴らしいブランドであり、ドイツ車としての品質と信頼性を兼ね備えています。あなたのカーライフがより豊かになるよう、自分に合ったブランドを選んでみてはいかがでしょうか。
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