似てるどっちが先?クラウンスポーツとプロサングエ、影響関係は逆だった
「フェラーリのプロサングエはトヨタのクラウンスポーツをパクったのではないか?」—この疑問を抱いたことはありませんか?
高級SUVとして注目を集める両車。一見すると似たようなデザイン要素を持ちながらも、まったく異なるブランド哲学と市場戦略を持つ2台の関係性について、今回は徹底的に解き明かしていきます。
実は、単純な「どちらが先か」という時系列だけでは語れない、自動車デザインの奥深い世界があるのです。
クラウンスポーツとプロサングエ、どちらが先なのか?
まず、時系列で見てみましょう。
トヨタのクラウンスポーツは2022年7月に公開されました。一方、フェラーリのプロサングエは2022年9月に発表されています。単純な発表時期だけを見れば、クラウンスポーツが先行していたことになります。

しかし、自動車デザインの世界では、コンセプト立案から量産モデルの発表まで通常3〜5年の歳月がかかります。両車のデザイン開発は2018年頃から並行して進められていたと考えるのが自然でしょう。
「どちらが先か」という単純な問いかけでは、この複雑な開発プロセスを正確に捉えることはできません。むしろ、両車が同時期に開発され、現代の自動車市場が求める要素を反映した結果、一部の類似点が生まれたと考えるべきでしょう。
自動車ジャーナリストの間でも、「パクリ」という単純な構図ではなく、「市場トレンドへの異なるアプローチ」という見方が主流となっています。
デザイン哲学の違い:プロサングエとクラウンスポーツ
一見似ているように見えても、両車のデザイン哲学には明確な違いがあります。
プロサングエはフェラーリの伝統的なスポーツカーのDNAを継承しつつ、SUVとしての力強さを表現するために鋭角的なラインや大きなフロントグリルを採用しています。全長4,973mm、全幅2,028mmという大柄な車体を持ちながらも、滑らかで流麗なラインが強調されています。

フェラーリ プロサングエ
「プロサングエは、フェラーリが長年培ってきたスポーツカーのデザイン要素を取り入れた結果、より攻撃的でダイナミックなスタイルを持っています」
一方、クラウンスポーツはトヨタの高級ラインの新しい方向性を示し、より控えめでエレガントなボディラインが特徴です。全長4,930mm、全幅1,850mmとプロサングエに比べややコンパクトな設計で、ホイールベースは2,850mmとなっています。
クラウンスポーツは、トヨタの高級車ラインの一環として、より落ち着いたエレガンスを持ち合わせています。洗練された上品さと実用性のバランスが取れたデザインは、日本の美意識を感じさせます。

クラウン スポーツ
両車の違いは、それぞれのブランドが大切にしている価値観の違いを反映しています。フェラーリが「情熱」と「パフォーマンス」を前面に押し出すのに対し、トヨタは「品質」と「信頼性」を基盤とした上での「洗練」を追求しているのです。
フロントデザインの比較:グリルに見る個性
両車の個性が最も顕著に表れるのがフロントグリルです。
プロサングエのフロントグリルは、フェラーリらしい大胆かつ独創的なデザインで、中央に配置された大型のエアインテークが特徴です。これはエンジン冷却効率を最大化しつつ、視覚的なインパクトを与えるために設計されています。

フェラーリ プロサングエの特徴的なフロントグリル
グリルはフロント全体を支配し、フェラーリのエンブレムが中央に堂々と配置されていることで、ブランドのアイデンティティを強調しています。また、プロサングエのグリルは、風洞実験によって空力特性を最適化しており、スポーツカーとしての機能性を損なうことなくSUVらしい力強さを持たせています。
対照的に、クラウンスポーツのフロントグリルはトヨタのデザイン哲学を反映したもので、シンプルさと上品さが際立っています。クラウンスポーツは、水平基調のデザインを採用し、ワイドで落ち着いた印象を与えるグリルが特徴です。

トヨタ クラウンスポーツのエレガントなフロントグリル
エアインテークは控えめに設計されており、全体のデザインが洗練されている一方で、トヨタのエンブレムが中央にしっかりと配置され、ブランドの一貫性を保っています。また、クラウンスポーツのグリルは、ラグジュアリー感を強調するためにクローム仕上げが施されており、シンプルでありながらも高級感を醸し出しています。
両車のフロントデザインを見比べると、同じSUVというカテゴリーでありながら、まったく異なるアプローチで個性を表現していることがわかります。
内装デザインの違い:贅沢さの表現方法
内装デザインにおいても、プロサングエとクラウンスポーツはそれぞれ異なる方向性を持っています。
プロサングエの内装は、フェラーリが誇るスーパーカーのエッセンスを内装にまで取り入れており、贅沢さとスポーティさが融合した空間を提供しています。特に、高級レザーやアルカンタラをふんだんに使用しており、各パーツは職人の手によって丁寧に仕上げられています。

フェラーリ プロサングエの豪華な内装
運転席にはデジタルディスプレイが配置され、ドライバーに必要な情報を直感的に提供するデザインとなっています。また、センターコンソールにはカーボンファイバーやアルミニウムなどの素材が使用され、軽量化と高級感を両立させています。
このような内装は、プロサングエが高性能車であることを象徴すると同時に、乗る人に特別な体験を提供するものです。
一方、クラウンスポーツの内装は、トヨタの上質で機能的なデザインが際立っています。シートやドアパネルに高品質な本革を使用し、上品で落ち着いた雰囲気を演出しています。内装カラーには落ち着いたトーンが採用されており、長時間のドライブでも疲れにくい環境を提供します。

クラウンスポーツの内装
さらに、クラウンスポーツは最新のインフォテインメントシステムを搭載し、12.3インチのディスプレイを備えることで、ドライバーにとって視認性が高く、操作しやすいレイアウトとなっています。また、トヨタ独自の静粛性技術により、車内は非常に静かで快適な空間が保たれています。
このように、プロサングエがスーパーカーの要素を強調した豪華さとスポーティさを追求しているのに対し、クラウンスポーツは快適性と実用性を重視した内装デザインとなっており、それぞれが異なるユーザー体験を提供しています。
価格と市場ポジションの比較
プロサングエとクラウンスポーツの間には、約10倍もの価格差があります。この差は単なる数字以上の意味を持っています。
プロサングエは約5,000万円という価格設定で、フェラーリブランドのステータスと希少性を反映しています。この価格には、高性能なエンジンと限定生産というプレミアム要素が含まれており、投資対象としての側面もあります。
フェラーリの顧客は、価格を単なるコストとしてではなく、自らのステータスシンボルとして捉えます。プロサングエはその価格に見合った価値を提供し、限定生産モデルとしての希少性も相まって、投資対象としての側面も持っています。

展示されるフェラーリ プロサングエ
一方、クラウンスポーツは約500万円前後と、より広範な顧客層をターゲットにしています。クラウンは信頼性とコストパフォーマンスを重視し、実用的な高級SUVとしての市場価値を確立しています。
クラウンスポーツは、トヨタの信頼性と安全性に支えられたモデルであり、メンテナンスコストも比較的抑えられているため、長期的な所有コストが少ないことが魅力です。また、豊富な装備と快適性を備えながらも、燃費性能も優れており、日常使用においても経済的です。
これにより、クラウンスポーツは高級感と実用性を両立させたモデルとして、多くの消費者から支持されています。
両者の価格差は、それぞれが異なる顧客層に向けた価値提案を行っていることを物語っています。プロサングエが富裕層をターゲットにした高級志向であるのに対し、クラウンスポーツは実用性と高級感を重視しつつ、より多くの消費者にアプローチすることを目指しています。
購入条件とターゲット層の違い
プロサングエとクラウンスポーツでは、購入条件とターゲットとする顧客層にも大きな違いがあります。
プロサングエの購入は、単に高額な支払い能力だけではなく、限定的な条件を満たすことが求められます。プロサングエは、フェラーリ初のSUVとしての高いステータスを維持するため、約5,000万円という価格設定に加え、購入者には厳格な信用審査が課せられることが一般的です。
これには、購入者の資産状況の確認や過去の購入履歴などが含まれ、フェラーリのブランドにふさわしい顧客であることが求められます。また、プロサングエは限定生産モデルであり、その希少性からも新規購入者に対する競争が激しく、購入できること自体が一種のステータスとなっています。
さらに、年間数百万円に及ぶメンテナンス費用や高額な保険料が発生するため、購入後の維持コストも無視できません。
プロサングエの購入者は、単なる移動手段としての車ではなく、ステータスシンボルとしての価値を重視します。この層は、フェラーリというブランドが持つエリート性、希少性、そして高性能を求めており、他に類を見ない特別な体験を期待しています。
一方、トヨタのクラウンスポーツは、比較的幅広い層をターゲットにしています。クラウンは日本国内において長年にわたり、信頼性と品質の象徴として認識されてきました。価格帯も500万円前後と、プロサングエに比べて遥かに手頃であり、ビジネスシーンから日常利用まで幅広く対応できる車として評価されています。
クラウンのターゲット層は、信頼性や安全性を重視しながらも、上質な乗り心地と一定のステータスを求める中高年層や、ビジネスエリートが中心です。また、クラウンは国内外の市場での展開を見据えており、そのターゲット層はより大衆的で、特定の富裕層だけに限定されない点が特徴です。
ブランドイメージの違い:フェラーリとトヨタ
フェラーリ プロサングエとトヨタ クラウンスポーツのブランドイメージは、車両自体の特性以上に、両社が持つブランド哲学に大きく依存しています。
フェラーリは、プロサングエを通じて、これまで築き上げてきたスーパーカーの象徴としての地位をSUV市場にも拡張しています。プロサングエは、フェラーリのDNAを継承したモデルとして、高性能なエンジン、独自のデザイン、そしてフェラーリ独特のエクスクルーシブ感を兼ね備えています。
フェラーリのブランドは、速度、力強さ、そしてエリート主義を象徴しており、プロサングエもそのイメージを色濃く反映しています。限定的な生産台数と高価格設定がブランドの希少性をさらに高め、所有すること自体が一つのステータスシンボルとなっています。
これに対して、クラウンスポーツは、トヨタブランドの信頼性と安心感を基盤としたモデルです。クラウンは、日本国内で長年にわたって高級車としての地位を築いてきたブランドであり、そのイメージは主に信頼性、快適性、そしてコストパフォーマンスに支えられています。
クラウンスポーツは、こうした伝統を受け継ぎつつ、現代のSUVトレンドに合わせた洗練されたデザインと、最新のテクノロジーを備えています。クラウンは、フェラーリほどの高級感やスーパーカーブランドとしてのイメージはないものの、多くの消費者にとって、信頼できる高級車という確固たるブランドイメージを持っています。
この違いは、プロサングエが富裕層のエリート主義を象徴する一方で、クラウンスポーツは広範な層に支持される高級車としての地位を確立している点に表れています。
維持費の現実:所有コストの比較
プロサングエとクラウンスポーツの維持費を比較すると、両者のコスト構造には大きな違いがあることがわかります。
まず、プロサングエはフェラーリが製造する超高級SUVであり、その維持費は一般的なSUVの水準をはるかに超えます。具体的には、年間のメンテナンス費用だけでも数百万円が必要とされます。
これは、プロサングエが搭載しているV12エンジンの特殊性や、カーボンファイバーを多用した車体のメンテナンスに高度な技術が要求されるためです。また、専用の高性能タイヤの交換費用も4本で数十万円に達することがあり、保険料も高額です。
さらに、フェラーリはブランドのステータスを維持するために正規ディーラーでの定期点検が求められ、その費用も相応の負担となります。
一方、クラウンスポーツはトヨタが提供するスポーツSUVとして、より現実的な維持費が設定されています。クラウンスポーツの年間メンテナンス費用は数十万円程度に抑えられており、一般的な日本車と同様の維持費で済むことが多いです。
ハイブリッドモデルのため、燃費も良好で、年間の燃料費もプロサングエに比べると格段に低いです。また、トヨタ車の部品供給やサービスネットワークは全国的に広がっており、修理やメンテナンスの手間も少なく、保険料もフェラーリに比べてはるかに手頃です。
これらの要素から、クラウンスポーツはコストパフォーマンスに優れた選択肢であり、維持費の面でプロサングエとは大きく異なる特性を持っています。
結論:パクリではなく、異なる進化の形
クラウンスポーツとプロサングエの関係を「パクリ」と単純化するのは、自動車デザインの複雑なプロセスを理解していないと言わざるを得ません。
両車は確かに一部のデザイン要素に類似点があるものの、それぞれが異なるブランド哲学と市場戦略を持ち、独自の進化を遂げています。
プロサングエはフェラーリの伝統的なスポーツカーのDNAを継承しつつ、SUVとしての新たな挑戦を体現しています。その鋭角的なデザインや高性能エンジン、限定的な生産台数は、フェラーリならではの価値観を反映しています。
一方、クラウンスポーツはトヨタの高級ラインとしての伝統を守りながらも、現代のSUVトレンドに合わせた進化を遂げています。その洗練されたデザインや実用性、コストパフォーマンスは、トヨタが大切にしてきた価値観を体現しています。
両車の発表時期が近かったことから「影響関係」が取りざたされましたが、自動車開発の現実を考えれば、それぞれが独自の道を歩みながら、結果として一部の類似点が生まれたと考えるのが自然です。
むしろ、両車は現代の自動車市場が求める要素—洗練されたデザイン、高い走行性能、先進的なテクノロジー—を、それぞれのブランドの文脈で解釈し、具現化した結果と言えるでしょう。
クラウンスポーツとプロサングエ、どちらを選ぶかは、あなたの価値観とライフスタイル次第です。どちらも素晴らしい車であることに変わりはありません。
自動車の世界は、常に進化し続けています。今後も両ブランドがどのような革新を見せてくれるのか、楽しみに待ちたいと思います。
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