時速490キロという未知の領域へ|ブガッティ・シロン・スーパースポーツ300+
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2019年8月、自動車史に新たな1ページが刻まれました。
ブガッティ・シロン・スーパースポーツ300+が、ドイツのフォルクスワーゲン・エーラ・レッシエンテストコースで時速490.48km/h(304.7mph)を記録し、市販車として初めて300マイルの壁を突破したのです。この記録は単なる数字の更新ではなく、自動車工学の限界に挑戦し続けた人類の執念が結実した瞬間でした。

この挑戦を成功させたのは、ブガッティの公式テストドライバーであるアンディ・ウォレス氏。彼は1988年のル・マン24時間レースで総合優勝を果たした経験を持つベテランレーシングドライバーです。時速490キロという速度は、旅客機の離陸速度に匹敵します。
一般的な高速道路を走行する感覚とは次元が異なる世界です。
この記録達成の背景には、ブガッティが110年以上にわたって培ってきた技術力と、妥協を許さない完璧主義が存在します。創業者エットーレ・ブガッティが掲げた「走る芸術」という哲学は、21世紀の現代においても脈々と受け継がれているのです。
W16クワッドターボエンジンの圧倒的パワー
シロン・スーパースポーツの心臓部には、8.0リッターW型16気筒クワッドターボエンジンが搭載されています。

このエンジンは最高出力1600ps、最大トルク1600Nmという驚異的な性能を発揮します。シリンダーヘッドなどの改良により、標準シロンの1500psから100psの出力向上を実現しました。0-200km/h加速はわずか5.8秒、0-300km/hまでも12.1秒という俊足を誇ります。
W型16気筒エンジンとは、V型8気筒エンジンを2基組み合わせた独特の構造です。
この設計により、コンパクトなスペースに大排気量エンジンを収めることが可能になりました。4基のターボチャージャーは、低回転域から高回転域まで途切れることなくパワーを供給し続けます。わずかなターボラグの後、周囲の景色がSF映画のワープ画面のように強烈に後方へ流れる加速感は、電気自動車とは異なる息の長い加速特性を持っています。
トランスミッションは7速デュアルクラッチ(DCT)を採用し、全輪を駆動します。この組み合わせにより、1600psという膨大なパワーを確実に路面に伝達することができるのです。100km/hまでの加速では電気自動車に遅れをとるものの、160km/h、200km/hに達するまでには間違いなくシロンの方が早く到達します。
空力デザインが生み出す安定性
時速490キロという速度域では、空気抵抗との戦いが最大の課題となります。

シロン・スーパースポーツは、リアエンドを24cm延長することで空力性能を大幅に向上させました。Cd値(空気抵抗係数)を0.35から0.37の間に抑えながら、リフトを44%も低減するという徹底的なエアロダイナミクスの改良が施されています。
各フェンダーに設けられたエアアウトレットは、かつての名車「EB110」をモチーフにしたデザインです。
これらのアウトレットは単なる装飾ではなく、エンジンルームやブレーキシステムの冷却に重要な役割を果たしています。高速走行時には膨大な熱が発生するため、効率的な冷却システムなくして記録達成は不可能でした。
クローズドコースで最高速度に挑戦する際に使用する「スピードキー」をシート脇のスロットに差し込むと、スポイラーやウィングが空気抵抗の最も低い位置にとどまる仕組みとなっています。この機構により、最高速アタック時には空気抵抗を最小限に抑えることができます。通常のドライブモード「EB」では、快適性と性能のバランスが取られた設定となっています。
世界で唯一の500km/h対応タイヤ
時速490キロという速度に耐えられるタイヤは、世界中を探してもほとんど存在しません。

ブガッティとミシュランは共同で、新開発の「ミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2」を開発しました。このタイヤは世界で唯一、500km/h走行にも耐えうる性能を実現しています。
タイヤには想像を絶する遠心力がかかります。
時速490キロでは、タイヤは毎秒約136メートル進みます。この速度域では、タイヤの構造材料、トレッドパターン、内部構造のすべてが極限の状態にさらされます。ミシュランの技術者たちは、数年にわたる研究開発の末、この課題を克服しました。
アルミホイールもスーパースポーツ専用デザインとなっており、高速走行時の空力性能と冷却性能を両立させています。ブレーキング時には、ミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2が素晴らしいグリップで減速性能を発揮し、強烈なG加速度を体験させながらも姿勢は安定しています。ステアリングには軽く手を添えているだけでまっすぐに減速できる安定性は、タイヤとシャーシの完璧な調和の証です。
超高級内装に宿る職人技
時速490キロを目指すハイパーカーでありながら、シロン・スーパースポーツの内装は妥協を許しません。

上質なタンレザーとカーボンファイバー、磨き出しのアルミで構成された内装は、通常プラスチックで済ませる黒いエアアウトレットまでチタン製という凝りようです。フロントシートのヘッドレストにはスーパースポーツのロゴが入り、ステアリングホイール脇にはスターターボタンが配置されています。
ドライバーの目前には、通常の2倍のスケールで500km/hまで刻まれているスピードメーターが象徴的に鎮座しています。
表示はアナログで、タッチパッドなどは見当たりません。この設計思想は、ドライバーが運転に集中できる環境を提供するためのものです。デジタル表示が主流となった現代において、あえてアナログメーターを採用する姿勢に、ブガッティの伝統へのこだわりが感じられます。
乗り心地はこれまでのヴェイロンよりもずっと洗練されており、路面からのショックの吸収はもちろんロードノイズも非常に小さいことが確認されています。ステアフィールも大幅に改善されており、狭い田舎道のワインディングでもサイズを忘れるほど敏捷な動きをします。全長4.7m、全幅2.2m、全高1.2mという巨体を感じさせない操縦性は、最新のシャーシ技術とサスペンション設計の賜物です。
限定30台、4億7200万円の価値
シロン・スーパースポーツは30台限定で発売され、価格は欧州で税抜き350万ユーロ(4億7200万円)でした。

この試乗車を含め、限定生産30台はすでに完売しています。平均所有車台数が32台にも達するといわれるブガッティオーナーにとって、この価格は決して高くないのかもしれません。
ブガッティは2016年にモデルチェンジしたシロンを含め、これまでに700台を出荷してきました。
各オーナーは自分だけの仕様をオーダーすることができ、カラーリングから内装素材、ステッチの色に至るまで、無限のカスタマイズが可能です。今回公開されたシロン・スーパースポーツは、漆黒のボディに鮮やかなスカイブルーを内外装に配したカラーリングでした。現代のブガッティ車両で、ボディを真っ黒に仕上げるのは基本中の基本の選択であり、わずか4台が製作された「T57 SCアトランティーク」の1台である「ラ・ヴォワチュール・ノワール」をオマージュする意味でも正統派スタイルです。
内燃機関最後のブガッティという使命
シロン・スーパースポーツは、内燃機関を搭載する最後のブガッティとして2019年に開発を終えました。

VWグループは2022年にブガッティをクロアチアのスタートアップで電動スポーツカーメーカーのリーマッツに売却し、ポルシェと共同出資で合弁会社を設立することを決定しました。今後ブガッティは電動化の道を進むことになり、シロン・スーパースポーツは内燃機関を搭載する最後のブガッティとして位置づけられています。
時代は変化しています。
1km走る毎にステーキ2枚分、およそ550gの二酸化炭素を排出するクルマにとって住みにくい環境となっているのは事実です。しかし、W16エンジンが奏でる咆哮、ターボチャージャーが空気を圧縮する音、排気音が響き渡る感覚は、電動化では決して再現できない体験です。
シロン・スーパースポーツは、内燃機関の最高峰として歴史に名を刻むことになるでしょう。この車両が持つ技術的完成度と芸術性は、自動車が単なる移動手段ではなく、人類の創造性と技術力の結晶であることを証明しています。
ブガッティの歴史と「走る芸術」の系譜
ブガッティの名声は、創業者エットーレ・ブガッティの時代から始まりました。

1909年、エットーレ・ブガッティは当時ドイツ領だったモルスハイムで自らの名を冠した自動車会社を設立しました。イタリア・ミラノの芸術家一族に生まれたエットーレは、生涯イタリア国籍を保持したにもかかわらず、生粋のフランス人の精神を身につけていました。
彼はエンジニアというより芸術家に近い意識でクルマ作りに取り組んでいました。
ブガッティがつくるクルマは、レーシングカーであってもボディだけでなくエンジンやサスペンションなどの機能部品にも美しさを追求したデザインが行き届いていました。1924年登場のレーシングカー「T35」は、1929年から始まったモナコグランプリで3連勝を達成し、1930年のレースでは1〜6位を独占しています。
1926年に登場した超高級車「T41ロワイヤル」は、12.8リッター直列8気筒という巨大なエンジンを搭載した超弩級の大型高級車でした。あまりに大きく高価だったため7台しか作られませんでしたが、その超越した存在感で歴史に名を残す車となりました。ロワイアルで使われたサイドに円弧を描くツートーンの塗り分けは、その後のブガッティ車に多く使われ、現代のヴェイロンやシロンにも採用されています。
ハイパーカー競争の最前線
ブガッティ・シロンの記録は、ハイパーカー市場における激しい競争の一端を示しています。

フェラーリ「ラ・フェラーリ」は963psのハイブリッドパワートレインで0-100km/h加速2.4秒を実現し、マクラーレン「P1」は915psのハイブリッドシステムで最高のエキサイティングなパフォーマンスカーを実現しています。ケーニグセグは2019年に0-400-0km/hの記録を31.49秒で達成し、自身の記録を1.8秒も短縮しました。
電動ハイパーカーも台頭しています。
2025年には中国BYDの高級EVブランド「ヤンワン」のハイパーカー「U9」が時速496.3kmを記録し、ブガッティ・シロンの記録を更新しました。2978馬力という規格外のパワーと1200Vの超高電圧プラットフォームを持つこの車両は、電動化の波が確実にハイパーカー市場にも押し寄せていることを示しています。
しかし、内燃機関が持つ感情的な魅力は依然として強力です。W16エンジンの咆哮、ターボの加給音、排気音の響き、これらは電動モーターでは決して再現できない体験です。ブガッティ・シロン・スーパースポーツは、内燃機関の黄金時代を象徴する存在として、永遠に記憶されることでしょう。
試乗体験が明かす真の実力
ブガッティは世界中から8名のジャーナリストをフランス本社に招待し、試乗会を開催しました。
エスコートしてくれたのは、最高速度記録保持者であるアンディ・ウォレス氏でした。彼のドライブで指定された公道上のテストコースを走り、カントリーロード、オートルートを含むおよそ100kmのコースを体験しました。
スターターボタンを押すと、予想よりもおとなしいサウンドが低く響いてきます。
1600psのスーパースポーツは思ったよりもリニアでジェントルな加速を開始します。乗り心地はこれまでに乗ったヴェイロンよりもずっと洗練されていて、路面からのショックの吸収はもちろんロードノイズも非常に小さいのです。ステアフィールも大幅に改善されており、狭い田舎道のワインディングでもサイズを忘れるほど敏捷な動きをします。
オートルートの空いた直線路で一瞬だけスロットルを踏み込むと、ほんのわずかなターボラグの直後、周囲の景色がSF映画のワープ画面のように強烈に後方へ流れます。しかもそれはテスラ「モデルS」やポルシェ「タイカン」などの電気自動車とは違って唐突ではなく息が長いのです。あっという間に公道上故に人には言えないほどの速度に達した後、安全のためにブレーキペダルを蹴飛ばすように踏み込むと、ミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2は素晴らしいグリップで減速性能を発揮し、強烈なG加速度を体験させてくれました。
時速490キロがもたらす未来への示唆
ブガッティ・シロン・スーパースポーツの記録は、単なる速度競争の結果ではありません。
この挑戦は、人類が技術の限界に挑戦し続ける姿勢を象徴しています。時速490キロという速度は、現代の材料工学、空力設計、エンジン技術、タイヤ技術のすべてが結集して初めて達成できる領域です。この過程で開発された技術は、将来的に一般車両にも応用される可能性があります。
電動化の波は確実に押し寄せています。
しかし、内燃機関が持つ魅力は簡単には消えません。W16エンジンの咆哮、ターボチャージャーの加給音、排気音の響き、これらは人間の感情に直接訴えかける要素です。シロン・スーパースポーツは、内燃機関の最高峰として、自動車史に永遠に刻まれることでしょう。
ブガッティの挑戦は、速度記録という数字以上の意味を持っています。それは、人類が夢を追い続け、不可能を可能にする力を持っていることの証明なのです。時速490キロの世界は、私たちに技術の可能性と、それを追求する人間の情熱を教えてくれます。
まとめ:究極のハイパーカーが示す自動車の未来
ブガッティ・シロン・スーパースポーツが達成した時速490.48km/hという記録は、自動車工学の頂点を示すものです。
8.0リッターW16クワッドターボエンジンの1600ps、徹底的に改良された空力デザイン、世界で唯一500km/h走行に耐えうるミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2、そして職人技が光る超高級内装。これらすべての要素が完璧に調和して、初めて300マイルの壁を突破することができました。
30台限定、4億7200万円という価格は、この車両の希少性と技術的完成度を物語っています。
内燃機関を搭載する最後のブガッティとして、シロン・スーパースポーツは自動車史における重要なマイルストーンとなりました。電動化の波が押し寄せる中、このハイパーカーは内燃機関の黄金時代を象徴する存在として、永遠に記憶されることでしょう。
時速490キロの世界は、単なる速度記録ではなく、人類が技術の限界に挑戦し続ける姿勢の証です。ブガッティが110年以上にわたって培ってきた「走る芸術」という哲学は、21世紀の現代においても脈々と受け継がれています。この記録は、自動車が単なる移動手段ではなく、人類の創造性と技術力の結晶であることを改めて証明したのです。
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