エンジンブレーキを使いすぎると起こる7つの影響とメリット・デメリット

エンジンブレーキを使いすぎると起こる7つの影響とメリット・デメリット

エンジンブレーキの基本的な仕組みを示す図解

エンジンブレーキとは？基本的な仕組みと働き

車を運転していると、アクセルから足を離しただけで自然に減速する感覚を経験したことがあるでしょう。

これこそが「エンジンブレーキ」と呼ばれる現象です。エンジンの出力を絞ることで生じるエンジン回転の抵抗を利用して、車を緩やかに減速させる仕組みなのです。多くのドライバーは日常的にこの機能を無意識に活用していますが、その詳細なメカニズムやメリット・デメリットについては意外と知られていません。

エンジンブレーキが作動するのは、アクセルペダルから足を離した瞬間です。この時、燃料の供給が減少し、エンジンの回転抵抗が車の前進力に対して「ブレーキ」のように働きます。

通常の運転では、このエンジンブレーキの後にフットブレーキを踏んで完全に停止するという流れが自然と身についているはずです。

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エンジンブレーキの7つの影響とは？

エンジンブレーキを使いすぎると、車にどのような影響があるのでしょうか？

結論から言うと、通常の使用であれば特に心配する必要はありません。むしろ適切に活用することで様々なメリットが得られます。ただし、使い方によっては注意すべき点もあります。ここでは7つの主要な影響について詳しく見ていきましょう。

1. フットブレーキの過熱防止効果

過熱したブレーキディスクの様子

エンジンブレーキの最大のメリットは、フットブレーキの過熱を防止できる点です。

フットブレーキは摩擦材を使って車輪の回転を止めるため、使用すると大量の熱が発生します。特に長い下り坂などでブレーキを連続して使うと、ブレーキパッドやローターが異常な高温になることがあるんです。

この過熱状態が続くと、「フェード現象」と呼ばれる摩擦係数の低下や、「ベーパロック現象」というブレーキ液内に気泡が発生する危険な状態を引き起こします。最悪の場合、ブレーキが効かなくなるという恐ろしい事態に陥ることも。

エンジンブレーキを適切に使うことで、フットブレーキへの負担を分散させ、こうした危険な過熱を防ぐことができるのです。山道や長い下り坂では特に重要なテクニックと言えるでしょう。

2. ブレーキパッドの寿命延長

エンジンブレーキを上手に活用すると、ブレーキパッドなどの摩擦材の消耗を抑えられます。

フットブレーキは使うたびに少しずつブレーキパッドが摩耗していきます。特に街中の頻繁な停止と発進の繰り返しは、ブレーキパッドの寿命を縮める大きな要因です。

エンジンブレーキを併用することで、フットブレーキだけに頼る場合と比べて摩擦材への負担を大幅に軽減できます。これにより、ブレーキパッドの交換頻度が減少し、メンテナンスコストの削減にもつながるんですよ。

愛車を長く快適に使いたいドライバーにとって、このメリットは見逃せないポイントです。

3. 燃費への影響

エンジンブレーキは燃費にも良い影響を与えます。

エンジンブレーキ作動中には「減速時フューエルカット」という制御が働きます。これは車が減速している間、燃料の噴射を一時的に停止するシステムです。

つまり、エンジンブレーキで減速している間は燃料をほとんど消費していないことになります。フットブレーキだけで減速する場合と比べると、わずかながらも燃費向上につながる効果があるんです。

エンジンブレーキは燃料を使わない「タダのブレーキ」。賢く使えば財布にも環境にも優しい運転ができる。

特に街中の走行や渋滞時など、頻繁に加減速を繰り返す場面では、この効果が積み重なって目に見える燃費向上につながることもあります。エコドライブを心がけるドライバーにとっては、積極的に活用したいテクニックと言えるでしょう。

エンジンブレーキの使いすぎによるリスク

マニュアルトランスミッションのシフトレバー

エンジンブレーキには多くのメリットがありますが、使い方によってはリスクも存在します。

特にマニュアルミッション車では、不適切な使用方法によってエンジンやトランスミッションに負担をかけてしまう可能性があるのです。ここでは、エンジンブレーキの使いすぎによって生じる可能性のあるリスクについて解説します。

4. マニュアル車でのエンジン負担

マニュアルミッション車でのシフト操作ミスは、エンジンに大きなダメージを与える可能性があります。

特に注意すべきなのが「シフト飛ばし」と呼ばれる操作です。例えば5速から2速に一気にシフトダウンするような操作を行うと、エンジンが急激に高回転になり、内部パーツに過大な負荷がかかってしまいます。

最悪の場合、エンジン内部のピストンやコンロッドなどの重要部品が破損することもあります。

ただし、オートマチック車の場合は、こうしたリスクはほとんどありません。オートマチックトランスミッションには過回転を防ぐ保護機構が組み込まれているため、通常の使用範囲内であればエンジンブレーキを使いすぎても特に問題は生じないでしょう。

どう思いますか？マニュアル車を運転する方は、適切なギア選択を心がけることが大切ですね。

5. 後続車への配慮の必要性

エンジンブレーキを使用する際の見落としがちなリスクとして、後続車への影響があります。

エンジンブレーキだけで減速すると、ブレーキランプが点灯しないため、後続車のドライバーは前の車が減速していることに気づきにくくなります。

特に高速道路や見通しの悪い道路では、後続車との車間距離が十分でない場合、追突事故の危険性が高まります。

安全運転のためには、後続車の存在を常に意識し、急な減速が必要な場合は必ずフットブレーキを併用してブレーキランプを点灯させることが重要です。エンジンブレーキは便利なツールですが、他のドライバーへの配慮も忘れないようにしましょう。

6. 異音発生時の対処法

エンジンブレーキ使用中に異常な音が発生した場合は、すぐに対処が必要です。

「ウィーン」という唸り音や「ガラガラ」といった金属音が聞こえたら、エンジンやトランスミッションに何らかの異常が発生している可能性が高いです。このような症状を感じたら、エンジンブレーキの使用を控え、できるだけ早く整備工場で点検を受けましょう。

放置すると症状が悪化し、最終的にはエンジンやミッションの大規模な故障につながる恐れがあります。そうなると修理費用が数十万円単位になることも珍しくありません。

「ちょっとした異音だから大丈夫だろう」と思っていても、車の異常は急激に悪化することがあります。早期発見・早期対処が高額修理を防ぐ鍵となるのです。

オートマチック車でのエンジンブレーキの活用法

「エンジンブレーキはマニュアル車だけのもの」と思っていませんか？

実はオートマチック車でも、適切な操作でエンジンブレーキを効果的に活用することができます。ここでは、AT車やCVT車でのエンジンブレーキの使い方について解説します。

7. AT車・CVT車でのシフト操作

オートマチック車でも、シフトレバーを操作することで強いエンジンブレーキをかけることが可能です。

通常、オートマチック車はDレンジで走行しますが、シフトレバーをDから下の位置に動かすことで、より低いギアでの走行が可能になります。AT車では「2」や「1」（または「D2」と「L」）、CVT車では「S」や「B」といった表示があるポジションがこれに当たります。

例えば、長い下り坂を走行する際には、あらかじめシフトレバーを「2」や「S」のポジションに入れておくことで、より強いエンジンブレーキがかかり、フットブレーキの負担を大幅に軽減できます。

ただし、高速走行中に急にシフトポジションを変更すると、急ブレーキ状態になって危険です。シフト操作は必ず速度を落としてから行い、アクセルから足を徐々に離してエンジンブレーキをかけるようにしましょう。

私も以前、山道で初めてこの技を使った時は、その効果の高さに驚いた経験があります。ブレーキペダルをほとんど踏まなくても安定した減速が得られ、長い下り坂でもブレーキの焼き付きの心配なく走行できました。

どう思いますか？オートマ車でも工夫次第でエンジンブレーキを活用できることを知ると、運転の幅が広がりますよね。

エンジンブレーキを最大限活用するシーン

エンジンブレーキは様々な状況で役立ちます。

効果的に活用することで、安全性の向上、燃費の改善、車の寿命延長など多くのメリットが得られます。ここでは、エンジンブレーキが特に威力を発揮するシーンについて見ていきましょう。

長い下り坂での活用法

長い下り坂はエンジンブレーキの真価が発揮される代表的なシーンです。

山道などの長い下り坂では、フットブレーキだけに頼ると、ブレーキパッドやローターが過熱してブレーキの効きが悪くなる「フェード現象」が起きる危険性があります。こうした状況では、あらかじめ低いギアに入れてエンジンブレーキを活用することが安全運転の基本です。

長い下り坂の道路風景

マニュアル車なら3速や2速、オートマ車なら「2」や「S」のポジションを選択することで、適度な減速力が得られます。

私が初めて箱根の山道を運転した時のことです。下り坂が続く道でブレーキを多用していたら、ペダルが徐々に硬くなり、効きが悪くなってきました。慌ててギアを落としてエンジンブレーキを活用したところ、ブレーキの温度が下がり、無事に下山できました。この経験から、山道ではエンジンブレーキの活用が不可欠だと実感しました。

下り坂では、「ブレーキを踏む前にギアを落とす」という習慣をつけることで、安全性が大きく向上します。