新型BMW 1シリーズが売れない5つの理由と対策
新型BMW 1シリーズの外観
新型BMW 1シリーズが売れない5つの理由とは？
新型BMW 1シリーズ（第4世代）。「BMWの入門モデル」として人気を博してきたこのコンパクトカーですが、最近では「売れていない」という噂が広がっています。
実際のところ、この噂には根拠があるのでしょうか？
BMWファンの間では、新型1シリーズについて様々な意見が飛び交っています。特に「駆けぬける歓び」を重視するファンからは、駆動方式の変更や価格上昇に対する不満の声も。
今回は、新型BMW 1シリーズが「売れない」と言われる5つの理由と、その真相について徹底解説します。さらに、BMWが講じている対策や、実は見過ごされがちな新型モデルの魅力についても紹介していきます。
理由1：FR（後輪駆動）からFF（前輪駆動）への変更
新型BMW 1シリーズが「売れない」と言われる最大の理由は、駆動方式の変更にあります。BMWといえば、長年FR（フロントエンジン・リアドライブ）にこだわり続けてきたブランド。
駆動方式の変更は2019年登場の先代モデルからであり、今回の新型では継続採用されています。この変更は、多くのBMWファンにとって衝撃的だったのです。
BMW 1シリーズの駆動方式の変更を示す図解
FRは「駆けぬける歓び」を体現する駆動方式として、コーナリングでの安定性や加速時の重量バランスに優れています。特にスポーティな走りを好むドライバーにとって、この変更は「BMWらしさの喪失」と感じられたようです。
実際、現行モデル（F70）と先代モデル（F40）のユーザーレビューを比較すると、F40が4.43点だったのに対し、F70は3.63点と評価が下がっています。これは日本市場においても同様の傾向が見られます。
しかし、FFへの変更には明確な理由があります。室内空間の拡大や燃費効率の向上、さらには環境規制への対応など、現代の自動車市場で求められる要素を取り入れるための戦略的な判断だったのです。
それでも、「BMWに求めるのは走りの楽しさだ」というコアなファン層の声は無視できません。この駆動方式の変更が、新型1シリーズの販売に影響を与えている可能性は高いでしょう。
理由2：価格の上昇とエントリーモデルとしての魅力低下
プレミアムコンパクトカー市場の競争
新型BMW 1シリーズが直面している2つ目の課題は、価格の上昇です。従来、1シリーズはBMWの中で比較的手の届きやすい「エントリーモデル」として位置づけられてきました。
しかし、新型モデルでは装備の充実や技術の進化により、価格帯が上昇。基本モデルでも500万円近くになると予想されており、「手の届きやすいBMW」というイメージが薄れつつあります。
高級感のある新型BMW 1シリーズのインテリア
日本市場における最も安価なグレードでも車両本体価格は476万円。これは明らかに高級車の価格帯です。
価格上昇の背景には、48Vマイルドハイブリッドシステムの導入や、10.25インチのデジタルメーターと10.7インチのディスプレイが一体化した曲面ディスプレイの採用など、最新技術の搭載があります。
これらの装備は確かに魅力的ですが、「初めてのBMW」として購入を検討していた層にとっては、心理的なハードルとなっているようです。
また、同じプレミアムコンパクトセグメントのメルセデス・ベンツ Aクラスやアウディ A3との価格競争も激化しており、1シリーズの価格上昇は競争力低下につながっている可能性があります。
理由3：SUV人気の高まりによるハッチバック需要の減少
自動車市場全体のトレンドも、新型BMW 1シリーズの販売に影響を与えています。近年、世界的にSUV（スポーツ・ユーティリティ・ビークル）の人気が急上昇し、コンパクトハッチバックの需要が相対的に減少しているのです。
この傾向は日本市場でも顕著で、多くのユーザーが実用性や視界の良さを理由にSUVを選択する傾向にあります。
都市部を走行する新型BMW 1シリーズ
BMWも市場の変化に対応し、X1やX2といったコンパクトSUVを展開しています。実際、これらのモデルは好調な販売を続けており、1シリーズの潜在的な顧客層を取り込んでいる側面もあるでしょう。
特に日本の都市部では駐車スペースの制約があるため、コンパクトなサイズながら室内空間が広く、乗降性に優れたSUVは魅力的な選択肢となっています。
新型1シリーズは全長4361mm、全幅1800mm、全高1459mmとコンパクトなサイズを維持していますが、同じ価格帯でより実用的なSUVを選ぶユーザーが増えているのは事実です。
このような市場環境の変化も、新型1シリーズの販売に影響を与えている要因の一つと考えられます。
理由4：デザインの変化と「BMWらしさ」の変容
新型BMW 1シリーズのデザインも、販売に影響を与えている可能性があります。BMWのデザイン言語は近年大きく変化しており、特に特徴的なキドニーグリルの大型化は賛否両論を呼んでいます。
新型1シリーズでは、フロントフェイスがよりシャープで洗練された印象に変わり、キドニーグリルには歯のような独自のデザインが採用されました。
このデザイン変更について、「BMWらしさが薄れた」「従来のスポーティな雰囲気が失われた」という声も少なくありません。特に、長年BMWを愛用してきたファンの中には、デザインの方向性に違和感を覚える人もいるようです。
また、リアデザインでは2分割式のテールライトが新たに採用され、全体的なシルエットもより丸みを帯びたものになりました。これらの変化は、BMWの新しいデザイン哲学に沿ったものですが、従来のファンには受け入れがたい部分もあるようです。
一方で、若い世代や新規顧客からは「モダンで洗練された」「先進的」という評価も得ており、デザインの評価は世代や好みによって大きく分かれています。
デザインは車選びの重要な要素であり、特にプレミアムブランドでは「ブランドらしさ」が購買決定に大きく影響します。新型1シリーズのデザイン変更が、一部の顧客層の購買意欲に影響している可能性は否定できないでしょう。
理由5：競合モデルとの差別化の難しさ
プレミアムコンパクトカー市場は競争が激しく、新型BMW 1シリーズは強力なライバルたちとの差別化に苦戦しています。メルセデス・ベンツ Aクラス、アウディ A3、そしてフォルクスワーゲン・ゴルフなど、魅力的な競合モデルが数多く存在するのです。
特に、メルセデス・ベンツ Aクラスは先進的なインフォテインメントシステム「MBUX」を搭載し、アウディ A3はスポーティな走行性能と洗練されたデザインで人気を集めています。
プレミアムコンパクトカー市場の競争
新型1シリーズは48Vマイルドハイブリッドシステムの導入や、カーブドディスプレイの採用など、技術面での進化を遂げていますが、競合モデルも同様に進化を続けており、明確な優位性を打ち出すことが難しくなっています。
また、価格面でも競合モデルとの差別化が難しくなっています。新型1シリーズの価格上昇により、同じ価格帯でより上位クラスの他ブランド車を選択できるケースも増えており、コストパフォーマンスの面で厳しい評価を受けることもあります。
さらに、電動化の流れの中で、プラグインハイブリッドやフル電気自動車のラインナップが充実している競合ブランドに対して、新型1シリーズは48Vマイルドハイブリッドにとどまっている点も、環境意識の高い消費者からは物足りなく感じられる可能性があります。
このように、競合モデルとの差別化の難しさも、新型1シリーズの販売に影響を与えている要因の一つと考えられます。
新型BMW 1シリーズの隠れた魅力とは？
「売れない」と言われる新型BMW 1シリーズですが、実は多くの魅力を秘めています。ここからは、あまり語られることのない新型モデルの隠れた魅力について紹介していきましょう。
48Vマイルドハイブリッドがもたらす驚きの燃費と走り
新型BMW 1シリーズに搭載された48Vマイルドハイブリッドシステムは、単なる燃費向上だけではない魅力を持っています。
このシステムは、加速時にモーターがエンジンをアシストし、減速時にはエネルギーを回収してバッテリーに蓄電します。その結果、ガソリンモデル「120」では欧州WLTP基準で16.6～18.8km/Lという優れた燃費性能を実現。ディーゼルモデル「120d」に至っては20.8～23.2km/Lという驚異的な数値を達成しています。
BMW 1シリーズの48Vマイルドハイブリッドシステム
さらに注目すべきは、このシステムがもたらす走行フィーリングの向上です。エンジンの始動がより滑らかになり、アイドリングストップからの再始動時の不快感が大幅に軽減されました。
加速時のレスポンスも向上し、特に低速域でのトルクアシストにより、市街地走行での快適性が格段に上がっています。これは、日常使いのシーンで大きなメリットとなるでしょう。
「BMWらしい走り」を犠牲にすることなく、環境性能と快適性を両立させたこのシステムは、新型1シリーズの大きな魅力の一つです。
拡大された室内空間と実用性の向上
FF駆動への変更により、新型BMW 1シリーズの室内空間は大幅に改善されました。特に後部座席の居住性が向上し、従来モデルと比較して足元スペースが約40mm広くなっています。
また、全長が42mm延長され4361mmに、全高も25mm高くなり1459mmとなったことで、ヘッドスペースも拡大。これにより、後席の乗り心地が格段に向上しました。
トランク容量も380リットルと、先代モデルから20リットル増加。リアシートを倒せば最大1,200リットルまで拡大するため、週末のレジャーや買い物など、様々なシーンで十分な積載能力を発揮します。
このように、新型1シリーズは「走りの楽しさ」だけでなく、「日常の使いやすさ」も大幅に向上させています。コンパクトカーでありながら、実用性においても妥協のない設計となっているのです。
M135 xDriveがもたらす圧倒的パフォーマンス
新型BMW 1シリーズのトップモデル「M135 xDrive」は、コンパクトカーとは思えない圧倒的なパフォーマンスを誇ります。
2.0リットル直列4気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力300馬力、最大トルク400Nmを発揮。0-100km/h加速はわずか4.9秒という、スポーツカー顔負けの性能を持っています。
BMW M135 xDriveの走行シーン
さらに、BMWのインテリジェント四輪駆動システム「xDrive」を搭載し、優れたトラクション性能とコーナリングの安定性を確保。アダプティブMシャシーは路面状況や運転スタイルに応じてサスペンションの硬さを自動調整し、快適な乗り心地とスポーティな走行性能の両立を可能にしています。
「FF化でBMWらしさが失われた」という批判もありますが、M135 xDriveは紛れもなく「駆けぬける歓び」を体現するモデルであり、ドライビングプレジャーを重視するユーザーにとって魅力的な選択肢となっています。
BMWの対応策と今後の展望
新型1シリーズの販売状況に対して、BMWはどのような対応策を講じているのでしょうか。また、今後の展望はどうなっているのでしょうか。
環境性能と走行性能の両立
BMWは、環境規制が厳しくなる中でも「駆けぬける歓び」を提供し続けるため、技術革新に力を入れています。48Vマイルドハイブリッドシステムの導入はその一例で、燃費効率を向上させながらもパフォーマンスを維持する戦略です。
また、FF駆動でありながら、ARB（タイヤスリップコントロールシステム）の採用により、FF車特有のアンダーステアを大幅に抑制。より素早く正確な走りを実現しています。
さらに、アルミ製エンジンフードの採用や高張力鋼とアルミを効果的に組み合わせたフレームにより、ボディ剛性を確保しながら最大30kgの軽量化を実現。この軽量化もドライビングフィールに大きく貢献しています。
これらの技術により、BMWは環境性能と走行性能の両立を図り、新型1シリーズの魅力を高めようとしています。
デジタルインテリアの強化
現代の消費者ニーズに応えるため、BMWは新型1シリーズのデジタルインテリアを大幅に強化しています。
10.25インチのデジタルメーターパネルと10.7インチのインフォテインメントディスプレイが一体化した「カーブドディスプレイ」は、視認性と操作性を大幅に向上させました。
最新のiDriveシステム「OS9」は、クイックセレクト機能やボイスコントロールによって操作性が向上。物理的なボタンの数も減少し、より直感的な操作が可能になっています。
また、Qi対応機器を充電できるワイヤレス充電機能を全車に標準装備するなど、デジタル世代のニーズに応える装備も充実させています。
これらのデジタル技術の強化により、BMWは若年層や技術志向の顧客層にもアピールしようとしています。
プレミアム感の向上とブランドイメージの強化
価格上昇に対応するため、BMWは新型1シリーズのプレミアム感を高める取り組みも行っています。
内装素材の質感向上はその一例で、サステイナビリティを考慮したレザーフリートリムの標準装備や、アルカンターラなどの高級素材の採用により、上質な室内空間を実現しています。
また、最新の安全装備や運転支援システムの充実も、プレミアムブランドとしての価値を高める要素となっています。
BMWは、1シリーズをエントリーモデルとして位置づけながらも、ブランドの核となる「駆けぬける歓び」と「プレミアム感」を損なわないよう、バランスの取れた進化を目指しています。
今後は、さらなる電動化の推進や、デジタル技術の進化により、新型1シリーズの魅力を高めていくことが予想されます。
まとめ：新型BMW 1シリーズは本当に「売れない」のか？
ここまで、新型BMW 1シリーズが「売れない」と言われる5つの理由と、その隠れた魅力、BMWの対応策について見てきました。では、新型1シリーズは本当に「売れない」モデルなのでしょうか？
確かに、FR（後輪駆動）からFF（前輪駆動）への変更や価格の上昇、SUV人気の高まりなど、販売に影響を与える要因はいくつか存在します。特に、「BMWらしさ」を重視するコアなファン層からは、駆動方式の変更に対する不満の声も聞かれます。
しかし、新型1シリーズには多くの魅力も存在します。48Vマイルドハイブリッドシステムによる優れた燃費性能と走行フィーリング、拡大された室内空間と実用性の向上、M135 xDriveがもたらす圧倒的なパフォーマンスなど、進化した点も数多くあります。
また、BMWも環境性能と走行性能の両立や、デジタルインテリアの強化、プレミアム感の向上など、様々な対応策を講じています。
新型BMW 1シリーズは、従来のBMWファンが求める「駆けぬける歓び」と、現代の自動車市場で求められる「環境性能」「実用性」「デジタル技術」のバランスを取ろうとする過渡期のモデルと言えるでしょう。
2025年春の日本市場導入を控え、その真価が問われるのはこれからです。価格設定やプロモーション戦略によっては、「売れない」という評価を覆す可能性も十分にあります。
BMW 1シリーズの購入を検討している方は、「BMWらしさ」の変化を懸念するだけでなく、進化した点にも目を向け、実際に試乗して体感してみることをおすすめします。あなたにとっての「駆けぬける歓び」が、新型1シリーズにも見つかるかもしれません。
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